
「葬儀が友引の日になってしまったので、人形を用意してくださいと言われた」
茨城県で葬儀を経験された方なら、耳にしたことがあるかもしれません。棺に人形をひとつ納める友引人形(ともびきにんぎょう)……全国的にはあまり知られていない一方で、茨城県とその周辺では今も受け継がれている風習です。
この記事では、下妻市を中心に、茨城県で数多くのご葬儀をお手伝いしてきた葬儀社という立場から、以下について解説します。
- 友引人形の意味と由来
- どんな人形を選び、どう納めるのか
- そもそも友引に葬儀をしてよいのか
茨城県でお葬式を執り行われる方には参考になるはずです。是非最後までお読みください。
友引人形とは|「身代わり」を託す人形

友引人形とは、友引の日に葬儀・火葬を行うとき、故人様と一緒に棺へ納める人形のことです。「友引に葬儀をすると、故人様が友(親しい人)をあの世へ引っぱっていく」という迷信があります。この考えを受けて、人の身代わりとして人形を「お供」として棺へ納める風習が友引人形の考え方です。
初めて聞くと不思議に感じるかもしれませんが、その根底にあるのは「誰も連れていってほしくない」という、ご遺族の切実な願いです。理屈ではなく祈りが形となった風習で、日本各地に残る形代(かたしろ)の系譜に連なる習わしと言えます。
*形代:人の災いを人形に移して身代わりとする文化
茨城県のほか、北関東の一部地域などでも同様の風習が知られています。しかし、県外から嫁いでこられた方や転入されたご家族には「友引人形」に馴染みはありません。そのような方々が、「葬儀社から突然人形と言われて戸惑った」というお話をよく伺います。
そもそも「友引」とは|仏教とは無関係という事実

友引人形を理解するには、そもそも「友引」とは何なのかを知る必要があります。友引とは、カレンダーに載っている「六曜(ろくよう)」(先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口)という6つの暦注のひとつです。
*暦注:暦に記載されている日や方位などの吉凶、その日の運勢、行動の指針などの注釈のこと
六曜は中国由来の占いが日本で変化したもので、仏教の教義とは関係がありません。「仏滅」に仏の字が使われているため仏教の暦と誤解されがちですが、これも当て字です。「仏滅」は、もともとは「物滅」と表記したといわれています。
そして「友引」自体がもともとは「共引(共に引く)」、つまり、勝負がつかず引き分けになる日、という意味でした。それがいつしか「友引」と表記するようになり、「友を引く」と解釈されるようになったといわれています。そこから「慶事には良い日だが弔事には悪い日」という俗信が生まれた、と言われています。
つまり友引の日に葬儀を避ける習わしは、言葉の置き換えから始まった迷信による風習であって、宗教的な禁忌ではないのです。実際、仏教の教えの上で友引の葬儀を戒める根拠はなく、僧侶が友引の読経を断ることも基本的にありません。
それでも友引が意識され続ける、現実的な理由

「そういうことなら気にしなくていいのですね」と思われるかと思いますが、現実的に友引を無視できない事情が2つあります。
友引を休場日とする火葬場が多い
俗信とはいえ利用者が友引を避けてきた歴史から、友引を休場日としている火葬場は、今も全国に数多くあります。火葬炉の点検や職員の休みを確保する日として、友引が長く使われてきたためです。ただし、近年は火葬の件数が増え、友引の日にも開場する火葬場が出てきています。ご利用予定の火葬場の休場日は、必ず葬儀社にご確認ください。
*下妻市にある火葬場「ヘキサホール・きぬ」は、友引の日は休業します。
ご親族の中に気にされる方がいる可能性がある
ご自身が気にしなくても、ご高齢の親戚が「友引に葬式なんて」と心を痛めるなら、それは無視できない現実です。配慮する必要があると私たちは考えます。
ここで友引人形の出番になります。日程の都合でどうしても友引に葬儀を行う場合、友引人形を納めることで「対策はしっかりしてあります」と周囲に示すことができます。つまり俗信と現実の折り合いをつける、先人の知恵が友引人形なのです。
「気にする・気にしない」の論争をせずに全員が安心できる。この風習が今も生き残っている理由は、ここにあると私たちは考えています。
どんな人形を選ぶ?納め方は?

友引人形の具体的な選び方・注意点について解説します。
人形の選び方
決まった様式はありませんが、実際によく選ばれるのは次のようなものです。
| 選び方 | 例 | 込められる想い |
|---|---|---|
| 故人様愛用の人形 | 飾っていた市松人形・ぬいぐるみなど | 慣れ親しんだものをお供に |
| 新しく用意する人形 | 小さな布製の人形など | 身代わりの役目として新調 |
| 手作りの人形 | ご家族が縫った小さな人形 | ご遺族の祈りを形に |
大きさは、棺に無理なく納まる小ぶりなものが適しています。当社でも友引人形のご用意についてご相談いただけますので、お申し付けください。
納めるときの注意|素材の確認を
ひとつだけ、大切な注意点があります。それは火葬炉に入れられない素材があることです。以下の素材は、溶けてご遺骨に付着したり、燃えたときに有害なガスが発生したりするおそれがあるため、火葬炉に納めることができません。
- 金属
- ガラス
- 陶器のパーツ(人形のガラス製の目、金属の飾りなど)
- プラスチック
- ビニール類
また、布製・木製の小さな人形は納められることが多いのですが、火葬場によって基準が異なります。人形やぬいぐるみそのものを副葬品として制限している火葬場もあるため、必ず事前に葬儀社へご相談ください。
「棺に納められないなら意味がないのでは」と思われるかもしれませんが、ご心配には及びません。炉に入れられない人形は、出棺までお棺に添え、火葬の直前にお預かりして後日ご供養する、という方法もあります。現場では、想いを託すことと、物理的に燃やすことを分けて考えています。
実際の流れ|友引の葬儀はこう進む

当社で友引の日にお葬式をお手伝いする際の、実際の流れをご紹介します。
- まず日程の打ち合わせの段階で、火葬場の空き状況を確認します
- 「この日程ですと告別式が友引にあたります」とお伝えします
- そのうえで、以下の2択をご提案します
- 日程を1日ずらす
- 友引のまま進め、ご希望に応じて友引人形を納める
返答を急かすことはありません。ご親族のみなさまでご相談の上、どちらになさるか決定してください。友引人形を納めるタイミングは、「納棺の儀」の時が一般的です。故人様の胸元や足元など、お身体に寄り添う位置にそっと納めます。
ご家族の手で納めていただくことも、スタッフがお手伝いすることもできます。「おじいちゃんが寂しくないように」とお孫さんが選んだぬいぐるみを納められたご家族もいらっしゃいました。迷信からきている風習であっても、そこに込める気持ちはご家族様それぞれで良いのです。
友引以外の六曜は気にするべき?|早見表

友引の話をすると、「では仏滅や大安はどうなのか」というご質問をいただくことも多いです。結論から言えば、葬儀の日取りを決定する際に影響するのは友引だけです。
| 六曜 | 葬儀・通夜への影響 |
|---|---|
| 大安 | 問題なし。「お祝い事の日に葬儀は…」と気にする説もあるが、避ける必要はない |
| 友引 | 俗信上避けられがち。火葬場の休場日にあたる場合は執り行えない |
| 仏滅 | 問題なし。仏教とは無関係の当て字(元は物滅)で、弔事の禁忌ではない |
| 先勝・先負・赤口 | いずれも問題なし |
通夜についても、友引を含め、どの六曜でも差し支えないとされています。六曜を気にしすぎると日程の選択肢が狭まり、かえってご遺族の負担が増えます。「気にされるご親族がいるか」だけを確認し、あとは火葬場の予約状況と宗教者のご都合で決めるのが、現実的な進め方です。
県外のご親族への説明のしかた

友引人形を納めることにした場合、この風習を知らない県外のご親族から「なぜ人形が?」と尋ねられることがあります。そのような時は、次のようにお伝えください。
「茨城では、友引の日のお葬式のときに、故人の道連れの身代わりとして人形を納める風習があるんです。おばあちゃんが誰も連れて行かず、安心して旅立てるように、という意味だそうです」
由来の学術的な正確さより、「残された家族を案じる風習」という趣旨が伝われば、たいていの方は温かく受け止めてくださいます。逆に、ご親族の地域に同様の風習がなく、違和感を持たれるようなら、無理に納める必要はありません。友引人形は、家族の気持ちをまとめるためにあるのですから。
役目を終えた人形・遺された人形の供養

友引人形とは別に、「故人が大切にしていた人形やぬいぐるみが家に残っていて、処分できない」というご相談も多くいただきます。人形は顔があるだけに、ごみとして手放すことに抵抗を感じるのは自然な感情です。
プリエールふるさわでは、毎年11月頃に人形供養祭を開催し、役目を終えた人形・ぬいぐるみを僧侶の読経とともにご供養しています。遺品整理で見つかった人形、お子様の成長で飾らなくなった雛人形・五月人形なども対象です。開催のご案内は公式ホームページのインフォメーションでお知らせしていますので、ご確認ください。
風習は「守るもの」ではなく「使うもの」

友引人形について、私たちが日々、ご葬儀をお手伝いするなかで感じていることをお伝えします。この風習の価値は、言い伝えが「本当かどうか」ではありません。
日程の制約で友引を選ばざるを得なかったご遺族が、「それでも最善の策を尽くした」と思えること。気にする親族と気にしない親族が、対立せずに同じ式に座れること。小さな人形ひとつが、そうした心の橋渡しをしてくれるのです。
ですから、人形を納めるかどうかで悩みすぎないでください。納めれば安心できる方がいるなら納める。誰も気にしないなら納めない。これでいいと思います。
友引人形はご家族が安心してお葬式を執り行うための手段であって、ご家族を縛るためのものではありません。判断に迷ったら、地域の事情を知る私たちが、ご親族への説明も含めてお手伝いします。お気軽にご相談ください。
友引人形についてよくある質問

友引人形について、ご相談の際によくいただく質問をまとめました。
友引に葬儀をしてはいけないのですか?
仏教上も法律上も問題ありません。友引を避ける習わしは迷信から生まれたものです。ただし火葬場が友引を休場日としている場合は火葬ができないため、日程は葬儀社と確認しながら決めましょう。
友引人形は必ず入れなければいけませんか?
義務ではありません。ご遺族やご親族が気にされない場合は、納めなくても差し支えありません。「気にされる方がいるなら納めておく」くらいの柔軟なお考えでけっこうかと思います。
ぬいぐるみでもよいですか?
布製の小さなぬいぐるみは友引人形として納めやすい選択です。ただし大きなもの、プラスチックや金属のパーツが多いものは炉に入れられない場合があるため、事前にご相談ください。
通夜が友引の場合も人形は必要ですか?
友引で意識されるのは主に火葬(お葬式)の日です。通夜が友引にあたることは一般に問題視されず、人形も不要とされています。
友引人形の風習は茨城だけのものですか?
茨城県で色濃く残る風習ですが、北関東など他の地域にも同様の習わしが見られます。地域や家によって考え方が異なるため、ご親族の意向を確認しながら進めていくと間違いないでしょう。
まとめ|友引人形は安心してお葬式を営むための先人の知恵
友引人形は、「大切な人があちらの世界へ引っ張られないように」という遺された方々の切実な願いから生まれた風習です。仏教的な禁忌ではなく迷信から始まったものですが、全員が安心してお別れに臨むための「先人の優しい知恵」として今も息づいています。
本記事の重要なポイントを振り返ります。
- 友引人形の役割
友引の葬儀で、故人様の「道連れの身代わり」として棺に納めるものです。 - 友引の葬儀自体は問題なし
宗教的なNGではなく六曜の俗信。ただし火葬場が休場日になりやすい点には注意が必要です。 - 人形選びの注意点
火葬炉を傷めないよう、金属やガラスを避け、燃えやすい素材の小ぶりなものを選ぶ。念のため、葬儀社スタッフに確認するようにしましょう。 - 最も大切なのは「家族の安心」
友引人形は絶対必要なものではなく、ご親族が心おだやかにお見送りするための選択肢として活用するものと考えてください。
「友引の葬儀で親戚にどう説明しよう」「どんな人形を用意すればいいのか」と迷われた際は、ご家族だけで悩む必要はありません。プリエールふるさわでは、地域の風習を熟知したスタッフが皆様の不安を取り除き、心から納得できる温かいお見送りをお手伝いいたします。どうぞ安心してお気軽にご相談ください。
どんなことでもお気軽に
ご相談ください!!